新型コロナウイルスの世界的流行によりワークスタイルそのものが大きく変化している昨今において、働き方改革に取り組もうとしている企業は少なくはありません。
従業員がそれぞれの生活に合わせて柔軟で多様な働き方を選択できるように生まれた「働き方改革」は新型コロナウイルスの拡大を受けて「新しい働き方改革」へと方向性が変化しつつあります。
感染症対策をしつつ、多様性のある働き方を実現することで、アフターコロナにおいても生産性を保ちつつ、従業員のモチベーションの維持、作業効率の向上が見込めます。
本記事では働き方改革について解説をしながら、新たな働き方の実現について紹介します。
働き方改革とは
働き方改革とは「働く人がそれぞれの生活の中で生じた事情に対して、柔軟で多様な働き方を、働き手自身が「選択」することができるように政府が行なっている取り組み(改革)」を指します。
「子育て中でも仕事ができるようにしたい」、「両親の介護をしながら仕事をしたい」、「定年後でも働きたい」といった事情に対して『時短勤務』や『育児休暇』『フレックスタイム』『テレワーク・リモートワーク』『副業・兼業の推奨』などの施策を取り組むことで、働き方に多様な選択肢を持たせることが狙いです。
2018年に働き方改革関連法案が可決され、2019年4月から施行されており、2022年10月現在でも適応が続いています。
法案の中で特に重要視されているのが「労働時間法制の見直し」「雇用形態に関わらずに公正な待遇を確保する」ことで、様々な法案によって見直しが行われています。
また、新型コロナウイルスの世界的な流行によってテレワークの普及が急速に進んでおり、多くの企業で働き方の見直しが行われました。
感染症対策として広まったテレワークは政府が働き方改革で推奨していた内容とリンクしていることから、コロナ禍を通じて一気に進展した状態と言えます。
ただし、急な進展に伴い組織における制度や体制が構築できておらず、課題が残る企業が多いのも事実であり、生産性向上のために新しい働き方として様々な施策が行われているのが現在の状況となります。
働き方改革の目的
そもそも、なぜ政府は働き方改革を進めたいのでしょうか?それには大きく分けて「労働者を増やす」「少子高齢化の対策」「労働生産性の向上」が挙げられます。
その中に「賃金等の処遇の公正化」「時間や場所といった制約の克服」などの対策が行われている状況です。ここでは3つの目的について解説します。
労働者を増やす
日本が抱える課題として「少子高齢化による働き手の減少」が挙げられます。
今後起こり得る深刻な労働者不足は現時点で確実に発生する未来のため、労働者を増やす改革として働き方改革は期待されています。
これらの課題を解決するために生まれた考え方が「一億総活躍社会」です。
政府は50年後も人口1億人を維持し、どのような人でもあらゆる場所で活躍できる社会を作ることを目指しています。
働き方改革では多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることで、誰でも自身の抱える事情と両立しながら働くことが可能になります。
少子高齢化への対策
出生率の向上が少子高齢化の解決に必要不可欠な要素となりますが、以前の日本では出生後の女性働きやすい環境が構築できておらず、仕事と子育ての両立が難しい傾向にありました。
また、男性側の育児休暇の取得が難しい傾向にあり、必要性が中々理解されていない点も子育ての難しさを上げてしまっていました。
働き方改革では、柔軟に働き方の選択ができるようにすることで、子どもを産んだ後でも子育てと仕事の両立が実現できるようにできると期待されています。
子どもを産んだ後も安心して働ける環境にすることで出生率を上げるのが政府の狙いとなります。
労働生産性能向上
日本生産性本部の調査によれば、2021年時点の日本の1人あたりの労働生産性は、OECD加盟38カ国中28位と低く、データ取得可能な1970年以降最も低い順位となっています。
労働生産性の向上のために必要な改革として「働きやすい勤務体制の整備」が欠かせません。
ワークライフバランスや性別や年齢を問わない労働力の確保のためには勤務時に発生する負担の解消は不可欠です。
例えば「通勤にかかるコストの改善」「労働時間の多様性」「働く場所の選択」を行うことで、働く時間を確保しやすくなり、労働生産性の向上に繋がります。
これらの課題を解決するために多くの企業では働き方改革に適応したオフィスや社内制度、組織体制の見直しを行なっています。
企業における働き方改革促進時の課題
働き方改革は従来の働き方を見直し、日本が抱えている課題を改善し、企業の生産性の向上、働き手の増加などを実現するものですが、導入するには多くの課題があります。
企業によっては今までの組織体制を全て変える必要がある場合もあり、多大なコストが発生するケースも珍しくありません。
また、新たに創業した企業に対しても最初から働き方改革への対応が必要となるため、今までの常識が通用せずに導入がうまく進んでいないケースも発生しています。
まずは、働き方改革を導入するためにどのような課題が発生するのかを把握し、事前に対策を考えておくことが大切です。
労働環境の改善にかかるコスト
働き方改革では「テレワークの導入」や「時短勤務の導入」といった労働に関わる制度を変えるほどの改革を必要とするため、導入するには多くの準備が必要になります。
例えばテレワークを導入する場合、以下の課題が挙げられます。
- 従業員の事情によって全ての方が在宅勤務を導入できる環境ではない
- Wi-Fiなどの通信環境が不安定
- 情報セキュリティ対策が不足
- インターネット上でのコミュニケーション不足
- テレワーク下での評価制度を整備できない
- 他部門との連携や情報共有が難しい
- 長時間労働になりやすい
- 仕事とプラベートの境目が消える…など
これらの課題を解決しないと、テレワークを導入したのにも関わらず生産性の低下がひき起こり、業績の悪化へと繋がる可能性も考えられます。
テレワークの課題を解説するためには「クラウドによるグループウェアやプロジェクト管理ツールによる管理体制の導入」「Web会議システム・ビジネスチャットツールの導入」「サテライトオフィスの設置」などが挙げられます。
また、人事制度の見直しは不可欠となり「評価制度の基準」は不公正を産まないように設計することが求められます。
例えば「評価プロセスの統一(評価者の裁量で判断をさせない)」や「目標管理制度の導入」「定期的なミーティングの開催」などが人事制度の事例として挙げられます。
雇用形態による格差を埋める
雇用形態による格差は社会問題として話題を集めており、現在多くの企業で課題として改善に取り組んでいる問題の一つです。
働き方改革を導入する際に雇用形態による待遇の違いは避けては通れない問題のため、発生する課題については理解しておきましょう。
まず、正社員と契約社員の待遇の違いが発生している場合は「差分の理由を言語化し、しっかりと理由を説明できるようにする」ことが重要です。
また、差分の理由が不当である場合は即座に後世に戻す必要があります。
「基本給」「一時金」「手当」などを説明できるように整理を行いましょう。
また、通勤手当や時間外労働による規定、深夜・休日手当、福利厚生などの待遇に差に対しても不合理性がないか確認をしましょう。
仮に合理的に公正な説明ができない待遇格差が発覚した場合は早急に対策を行うことが求められます。
組織体制の整備を行うことができれば従業員の満足度が向上し、働きやすい環境の構築へと一気に近づきます。
多様な働き方が実現可能な環境
多様な働き方を実現する環境を構築するには多大なコストが発生します。管理システムの導入、評価制度の見直し、テレワークが実現できる労働環境の整備、認証プロセスの見直し、組織体制の見直し、勤務形態の見直し、従業員の教育など取り組むべきことは多岐にわたります。
特に働く場所となるオフィスの見直しは重要で、仮にテレワークを導入したとしても、セキュリテイの関係上オフィスでなければできない業務は多々あるでしょう。
また、最も生産性高く労働できる環境がオフィスであるという従業員や部門もあるため、出社と在宅ワークのバランスも考えなければいけません。
そういった課題の解決として近年注目されているのがサテライトオフィスの導入です。
サテライトオフィスは従業員が住んでいるエリアにオフィスを構え、本社の周りに衛星のように存在するオフィスを指します。
従業員はテレワークの働く場所として利用できるため、通勤時間の削減や光熱費の削減、従業員同士のコミュニケーションの場を創出する、人材確保がしやすくなるといったメリットがあります。
近年ではオフィス形態も多様化が進んでおり、レンタルオフィスやシェアオフィスを活用すれば低コストでオフィスを構えることができるようになりました。
働き方改革を導入するためにもレンタルオフィスを活用してみるのも課題解決の糸口として期待できます。
レンタルオフィスを活用したテレワークによる働き方改革
前述で話題に上がった「レンタルオフィス」はオフィス機能をレンタルし、他の入居者と機能をシェアすることで格安なコストでオフィスを構えることができるサービスです。
このサービスを利用することで働き方改革の導入を円滑に進めることができると注目されています。
ここではレンタルオフィスを活用するメリットについて紹介します。
テレワークの導入を助けてくれる
レンタルオフィスは「契約者が専有の執務スペース」を契約し、オフィス機能(デスクや複合機、会議室、光熱費、通信環境など)を他の入居者とシェアすることでコストを抑えながらオフィスを構えることができるオフィス形態の一つです。
働き方改革を促進する中で「オフィスの在り方」や「テレワーク時の働く場所の確保」が課題として挙げられますが、レンタルオフィスであれば『オフィスの縮小』も『テレワーク時に利用できる働く場所の開設』にも活用が可能です。
レンタルオフィスは都心部だけでなく郊外や地方にもサービスを展開していることが多いため、自社にとって適切なエリアで探せます。
テレワークを進める中で、従業員が効率的に働ける場所としてレンタルオフィスを利用することで「通信環境の確保」「移動にかかるコストの削減」「コミュニケーションの創出」「オンオフの切り替え」「セキュリティ対策」など複数の課題の解決が期待できます。
サテライトオフィスによるオフィス機能の拡大
近年注目されている労働環境の改善施策として「サテライトオフィス」が挙げられます。
サテライトオフィスは本社を中心に衛星のようにオフィスを分散して設置することを指し、オフィス機能の分散や通勤コストの削減などの効果が期待できる施策です。
レンタルオフィスはサテライトオフィスとしても活用が可能です。
サテライトオフィスの開設時にかかるコストを抑えることができ、契約した日にオフィスとして利用できるため、スピード感を保ったまま施策の導入が可能です。
また、オフィス機能を分散することで震災や感染症によって本社機能が停止したとしても直ぐにリカバリーが可能です。
市場拡大の拠点としても活用できる
レンタルオフィスを活用すれば市場拡大の拠点地として営業所を直ぐに開設できます。
例えば東京を拠点としている中で、札幌市を中心に北海道に市場拡大をしようと計画していたとします。
通常であれば飛行機で毎回移動することになるため交通費がコストとして発生し、かつ仕事をする場所の確保のためにホテルなどを利用しなければいけない状況になりますが、レンタルオフィスを営業所として活用すれば、効率的に市場拡大が可能です。
また、拡大したエリアでも人材確保が行えるため、柔軟に事業を展開できる点も魅力です。
●まとめ
働き方改革は労働環境に改革を起こし、多様で柔軟な働き方を実現し、労働生産性の向上や出生率の改善など多くの社会問題を解決する施策です。
また、組織の生産性向上にも大きく影響するため、今後も多くの企業が取り組むことになる指針ともなります。
レンタルオフィスを活用することで働き方改革の導入をスムーズに行えるようになるため、労働環境の改善における施策の一つとして活用してみてはいかがでしょうか?